夢ふくらまそう!  愛媛県議会議員 ふくら浩一の活動報告  ~大福日記~


愛媛県議会議員      ふくら浩一の活動報告
by fukura51
大福日記No.130  「ハラカ国とポレポレ国」 その5
長々と綴った物語もいよいよ最終章です。

どうですか、皆さん?
どこかの国みたいですよね?


エピローグ ~二つの国

経済も、環境も、共同体も、日々の生活の希望すら破壊されてしまった
ハラカ国には、もはや風前の灯火と呼ぶのもはばかれるほど、灯火らしき
熱も光も見当たらない。

町は荒れ果て、表には人通りもまばらで、わずかに見受けられる地元住民と
思しき人影も、健康状態に何かしら支障をきたしているか、そうでなくとも、
その表情には絶望の色を浮かべるのみである。

船や飛行機の定期航路も廃止され、定期便以外の就航もほとんどない。

「この島にやって来る者などない。それを待つ人間もない。
そうさな、やって来るといえば、あとは死がやって来るだけさ。」と、
住民の間で、誰が誰に言うでもなく呟き合っていたそんな頃、
一つの事件が起こる。

その日は、珍しく少し肌寒さが感じられた。
昼下がり、ひと気のなくなった貨物港に、スクラップの山をあさっていた
少年の叫び声が響き渡った。

「船だー、船が来たぞー!」
「船!?」

船が行き交うことがなくなっていたこの島の沖合いに、船が現れた。
しかも、一つや二つじゃあない。

確かに大きさはといえば、ちょいと風が吹けば飛ばされてしまいそうな小船で、
随分のんびりしたスピードではあるのだが、次から次へと雲霞のごとく
沸いてきて、みるみるうちにハラカの島の東岸一帯を覆い尽くしてしまった。

噂を聞きつけたハラカ国の住人達が、続々と東岸に集まってきた。
つぎはぎだらけの帆に描かれた国章はどれも、紛れもない
「ポレポレ国」のものだった。

ハラカ国の住人たちは固唾を飲んでその光景を見つめている。
ポレポレの船から、長老らしき人間が、何人かの供を連れ、慇懃な姿勢で
ハラカの島へ上陸した。
慌てて誰かが叫んだ。

「ポレポレ国の旦那方。わざわざ来てもらってなんだが、ここにゃあもう、
盗る物も支配に値する土地も、何もありゃしませんぜ!」

長老と思しき人物は、笑ってこう答えた。
「何を言うとるんじゃ。ワシらは、あんたらに食いもんを届けに来たんじゃ。」

それを聞いたハラカの住人たちは、皆一様に驚いた。
「一体なんでだ?」

長老は、少し悲しそうな顔でこう話し始めた。
「ワシらの島にの、あんたらの島から逃げてきたちゅうやつらが、
大勢おるんじゃよ。
ここんとこ特に増えとる。
増えとるちゅうても、ろくな舟ものうて、食うものも食わずに来るんじゃから、
命からがらよのう。
実際、途中で海に沈んでいく仲間も随分おるそうじゃて。
そりゃ、気の毒なもんじゃったから、ワシらはそいつらを介抱してやって、
元気になったら、ワシらの島に住むも良し、出て行くも良しと思うとった。
じゃが、それにしても、次から次へとやって来る。
皆、逃げてきたちゅうとるが、一体何から逃げてきたんじゃ?
島に怪物でも現れたのか?それとも戦さか?では地震か?と聞いても
違うと答える。
じゃあ、何じゃ?と尋ねるんじゃが詳しくは分からん。
詳しくは分からんが、じっくり聞くうちに、島にあった便利な鉄の車も、
銭を生みだす工場も今は何の役にも立たず、とにかく皆、
食うに困っとるっちゅうことは分かってきた。
それならば、一刻の猶予もならんということで、皆総出で、野菜や果物や、
木の実や穀物を収穫し、魚を獲って、島の舟という舟を集めてやって来たと
いうわけじゃ。ほれ、見てみい。」

ハラカの人たちが、その老人の指差す方を見ると、浜辺に寄せられた
ポレポレの船のそこここで、沢山の食糧が積み込まれていることを
アピールするように、それぞれの手に持ちきれんばかりの魚やバナナの山を
高々と掲げるポレポレの水夫達の活き活きとした笑顔が見えた。

やがて、それらの物資が、ポレポレの男達の手で島に陸揚げされて行った。
その日のうちにはほとんど飢餓状態にあったハラカの島の隅々に、
当面の食糧が行き渡った。

さらに、同行したポレポレの女達によって炊き出しが行われ、ハラカの人間と
ポレポレの人間が入り混じって、三日三晩陽気に歌い踊り明かした。
ハラカの住人達がとうに忘れてしまった、そしてポレポレの人間たちが
今も大事に守り続けている、ゆっくりだが豊かな空気がハラカの島に流れた。

四日目の朝、ポレポレの人間は自らの島へ帰っていったが、その後も
ポレポレから食糧の支援は継続された。

ただ一方的に支援し、支援されるという関係ではなかった。ポレポレの人間が、
ハラカにやって来たり、ハラカからポレポレへ学びに行ったりする形で、
ハラカの人間たちが忘れてしまった種々の作物栽培を土作りから始めたり、
コンクリートをひっぺがえしてポレポレ人と一緒に育てた苗木を植えて
森を再生していったりしながら、ハラカがもう一度自らの意思と力で
自立するためのチャレンジが、始まったのだ。


ポレポレの船がやって来て三年目の秋には、ハラカ人自身が育てた麦で
パンが作られるようになった。
やがて、再生した森から養分が海へと運ばれ、魚たちが戻ってくるようになり、
またハラカの海に漁をする男達の姿が見られるようになった。

ハラカ国とポレポレ国との交流は、その後も続いた。
ハラカ人は自活できるようになったお礼にと、収穫物だけでなく、
外国人達が残していった機械を使って洋酒や洋菓子を作って届けた。

ある時は、太陽や水や風からエネルギーを生みだす発電装置なども提供した。
ポレポレ国の住人たちは、大変喜んだが、それらの便利な道具も決して
必要以上には使おうとはしなかった。
ポレポレ人は、何事においても、足るを知るということを重んじたのである。

ハラカの人々も、農業や漁業において、必要以上に収穫しようとしない
ポレポレ人たちのやり方をきちんと守った。

自活できるようになって何年目かの秋…
ハラカ人とポレポレ人の共同収穫祭の折、あるハラカ人が、
ポレポレ人の長老にこう尋ねた。

「なぜ、あの時、あんたらは俺たちを助けたのかね? 
わざわざ海を渡ってやって来て。」

「なぜも何もない。隣人が困っておったら、助けるのが当たり前じゃよ。」

「だって、俺たちを助けても、なんもアンタらの得にはならんじゃないか?
むしろ、損ばっかりだ。」

「ワッハッハッ!お若いの、そう損得ばかりで物事を考えなさんな。
人間は、損得勘定だけで動くとは限らんもんじゃよ。
フフフ・・。それにな。いずれは返ってくるもんじゃて。
目の前ばっかりで見とったら、こっちが損したじゃの、いやこっちの方が
ちょっと得じゃとなるが、長い目で見たら、どうしてこうして、ちゃんと帳尻が
合うようになっとるのよ。ようできたもんじゃ。
どっちにせよ、ワシやアンタの知恵も及ばん長い長い時間の中の話じゃがな、
ガハハハハ!!」

「しかし・・・」
ハラカ人は言葉を詰まらせ、苦し紛れに継ぎ足した。

「アンタたちは…、アンタたちはそれでいいかもしれないが、
俺たちは助けられっぱなしってわけにはいかねえ。
どうにかしてでも、この借りは返すぜ。」

「ほうほう、お若いの、威勢のいいのはいいことじゃが、まあ、落ち着きなされ。
貸しも借りもありゃあせん。
ワシらがアンタらで、アンタらがワシらじゃったとしても、同じことをしなさって
おるわい。お互い様、じゃよ。ワッハッハッハ……」

長老の高らかな笑い声が、祭りの賑わいの中へと溶けていった。
空がどこまでも青い日であった。

                                          -完-



どうでしたか?
これでこの物語は終わりです。

私はこの物語の作者と直接話をしているので、彼が何を言いたいかは
わかっています。
でも、それをここで説明しようとは思いません。

どうか皆さんがこの物語から何かを感じ取っていただければ幸いです。

by fukura51 | 2008-06-03 21:23 | ハラカ国とポレポレ国
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